噛み合わせ
噛み合わせは、
1,あごの関節(顎関節)
2,あごを動かす筋肉(咬合筋)
3,歯
4,歯を支えている骨(歯槽骨)
の4つの要素からなり、互いに影響し合っています。
噛み合わせが悪くなると、あごの関節の動きが悪くなったり、口を大きくあけるとあごを動かす筋肉にいたみがでたり、歯が大きく磨り減ったり、歯が割れたり、歯を支えている骨が吸収したり、歯がぐらぐらしたりなどの症状がでる事があります。
あご関節が比較的弱い方(あごのほっそりした女性の方が多い)は関節に症状が出やすい傾向にあります。
関節の痛みや違和感、開口または閉口時の関節の音、口が開きづらい、などはよくある症状です。
逆にあごの関節がしっかりしている方(あごががっしりした男性の方が多い)は関節の症状が出づらいです。
その分、歯の方に症状が出やすく、歯の破折、知覚過敏、つめものやかぶせものが取れやすい、歯が移動するなどが生じやすい傾向にあります。さらにあごの関節も強く、歯もしっかりしていれば歯を支えている骨が吸収して歯が揺れてくるなどの症状がでます。歯周病はかみ合わせの強さが大きく影響するので、歯科医院で良くチェックしてもらうことが必要不可欠です。
平均寿命の80歳台まで、大人の歯(永久歯)は6歳に萌出したとしても80年ぐらい持たせたいという事になります。歯は虫歯になったり、少しずつ摩耗や欠けたりと、長年使用していると問題は生じてきます。歯と歯を支える骨を守るための夜間のプロテクションスプリント(ナイトガード)を作製し使用するのも、一つの治療方法です。一人一人、歯並びや歯の位置は異なりますので、歯の型を取りオーダーメイドで作製します。柔らかいソフトタイプの樹脂より、硬いハードタイプの樹脂で作製する方が一般的です。
顎関節症治療の為のマウスピースは、同じように型を取り作製しますが、かみ合わせの付与の仕方が異なります。
歯並び
噛み合わせに対し、歯並びとは、専門用語で「歯列」といい、ただ単に歯の位置の連続性の事を言います。ですから、歯並びが悪い=噛み合わせが悪いにもなりませんし、歯並びが良い=噛み合わせが良いにもなりません、歯並びが悪くて問題となるのは、見た目が悪いという審美性の問題と、物がはさまる、歯ブラシがとどきにくいなどの清掃性の問題です。
歯並びは矯正治療やかぶせもの(クラウンやブリッジ)によって改善できますが、歯並びを治すと噛み合わせも当然変わります。歯並び改善の治療は噛み合わせを考えて治療をする事が大切となります。特に矯正治療は長い歳月がかかりますので、矯正して歯並びは奇麗になったが噛み合わせに問題が出たといった事のないように治療前にしっかり治療計画を立て、治療目標をはっきりして矯正治療を行うべきです。
矯正治療の装置の種類
①ブラケット矯正 ~ 歯にボンドで装置を接着、ワイヤーを歯科医院で装着。
②マウスピース矯正 ~ 歯型をとり、薄いマウスピースを作製し自分で装着。
③床矯正(小児) ~ 歯型をとり、義歯のような取り外し式の床装置を作製。
などがあります。
奥歯の歯並びを改善するための、部分矯正治療
上下左右の見た目とかみ合わせを改善させるための上下のブラケット矯正
歯にボンドで装着するブラケット装置が、白く目立ちづらくなって来ている。
食事以外は装着しますが、違和感や話づらくはありません。とにかく目立ちません。
顎関節症
あごが開かなくなったり、あごが動かしにくかったり、あごを開けると痛み
がでたり、あごの関節がカクカク音と鳴ったりなどあごに症状がでる事を顎関
節症(がくかんせつしょう)と言います。噛み合わせから顎関節症を引き起こす
こと思われがちですが、顎関節症=悪い噛み合わせではありません。顎関節
症の一番の原因は精神的ストレスで、当院でも、あごが急に開かなくなった患
者のほとんどは極度の精神的ストレス(仕事、受験、就職、引越し、人間関係
などの悩み)を抱えて来院されています。極度の精神的ストレスから歯軋りや
くいしばりをするようになり、顎関節や顎の筋肉にダメージをあたえます。その
際の治療法としてマウスピースを装着してなるべく顎関節や顎の筋肉に負担
が行かないようにしますが、極度のストレスがある際はマウスピースによる治
療をしても歯ぎしり・食いしばりはなくならないので、期待通りの成果をあげら
れません。一番の治療法は精神的ストレスからの開放です。適度な運動など
をして、健やかな生活を心がけましょう。
理想のかみ合わせとは
それではかみ合う力をバランス良くコントロールできる、理想の見合わせとは
どんな状態なのでしょう?そのポイントは2つです。
1、しっかり噛み合う奥歯があり、噛み合う安定した位置がある事。 これにより
、前歯を含めた歯列全体が保全されます。奥歯がないと、咀嚼に問題を起こ
すばかりか、上顎前歯が前に倒れ開いてきたり、残された歯に負担がかかり
疼痛、動揺、歯根破折、歯周病の進行促進など様々な問題が起きます。
2、左右に顎を動かした時に前歯(場合によっては小臼歯)がガイドとなって、
側方の運動をコントロール出来ている事。
あごを左右にずらしたとき上下の犬歯等があたることで水平的な力のバランス
をコントロールできます。それにより奥歯には有害な水平的な力を受けにくくし
ます。前歯の噛み合わせが奥歯を守ります。
元々初診時に犬歯が当たらないかみ合わせために、歯肉
どんどん下がり気味です。
理想的なかみ合わせして、奥歯を守るためのセラミック製のラミネートべニアを作製。
奥歯もよく安定して咬めるように虫歯と歯周病を取り除きセラミックにて修復、前歯の犬歯のラミネートべニアを貼るとによって、奥歯をしっかりと守る理想的なかみ合わせとなった。
咬んだ状態。奥歯がしっかりと咬んでいるのが理想的です。
咬んだ状態から左右に動かしたときに、犬歯が強く当たり奥歯は離れるのが理想的です。かぶせものを作製する際は、歯科医師も技工士も細心の注意を払います。
しかし理想の噛み合わせのないとすべてダメなのか?と言うとそんな事はありません。天然の歯の場合に、理想的な嚙み合わせの方が稀と言えます。歯を支えている骨に抵抗力がある方、根が長いなど歯の強い方などは、嚙み合わせが悪くても一生問題が生じづらい場合もあります。ただ、かみ合わせが良い方が、歯を喪失する確率は低いと言えます。嚙み合わせは歯科医院で見てもらわないと、自分では判断づらいので、良いと思っていたのに歯科医院で指摘されることもしばしばある話です。すでに噛み合わせから歯を喪失してしまい、根本から噛み合わせを構築していく際は、再度噛み合わせから問題とならないように噛み合う力のバランスを考えて理想の噛み合わせの考えを念頭において治療計画を立てる必要があります。具体的には欠損補綴(入れ歯、ブリッジ、インプラント)治療や矯正治療は噛み合わせを考えた治療計画が大切です。